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大阪地方裁判所 昭和55年(ワ)8964号 判決

原告

浦孝次

被告

ヤマト交通株式会社

ほか一名

主文

原告の請求をいずれも棄却する。

訴訟費用は、原告の負担とする。

事実

第一当事者双方の求めた裁判

一  原告代理人は、「被告らは各自、原告に対し、一五六九万二七六二円及びうち一四二九万二七六二円に対する昭和五四年七月二一日から右支払ずみまで年五分の割合による金員を支払え。訴訟費用は、被告らの負担とする。」との判決並びに仮執行の宣言を求めた。

二  被告ら代理人は、それぞれ主文同旨の判決を求めた。

第二当事者双方の主張

一  請求原因

1  事故の発生

(一) 日時 昭和五四年七月二一日午前二時三〇分頃

(二) 場所 大阪府堺市北花田町四丁一二八番地先の信号機のない交差点内

(三) 加害者及び運転者

第一加害車 普通乗用自動車(大阪五五え一一七五号。以下「甲車」という。)

右運転者 訴外新居国吉こと朴東沢

第二加害車 普通乗用自動車(泉五七た八二九一号。以下「乙車」という。)

右運転者 被告久保康代

(四) 被害者 原告(甲車後部座席に同乗中)

(五) 事故の態様

右交差点において、西から東に直進中の甲車と、北から南に直進中の乙車とが出合頭に衝突し、その衝撃で、甲車が進路右前方に暴走し、橋梁の欄干に衝突した。

2  責任原因(運行供用者責任)

(一) 被告ヤマト交通株式会社は、甲車を所有し、これを自己のため運行の用に供していた。(なお、同被告は運転者訴外朴東沢の使用者で、同訴外人には一時停止を怠つた等の過失があるところ同被告は、同訴外人を自己の業務に従事させていたものであるから、同被告には、民法七〇九条、七一五条の責任がある。)

(二) 被告久保は、乙車を所有し、これを自己のため運行の用に供していた。(なお、同被告は、乙車を運転していたもので、同女には一時停止等の過失があるから、民法七〇九条の責任がある。)

3  受傷、治療経過、後遺症

原告は、本件事故により、右大腿部・腰部・頭部打撲、頸部捻挫、腰部捻挫、外傷性頸部症候群等の傷害を受け、入院治療二四日、通院治療一〇か月(実治療日数二四一日間)の治療を受けたが、なお後遺症として、頸椎運動可動領域が前屈、後屈、左屈、右屈、左回旋、右回旋ともにそれぞれ二〇度にしかならない障害が残存した(右症状は後遺障害別等級一二級一二号の局部に頑固な神経症状を残すものに該当する。)。

4  損害

(一) 治療費 八万八六六六円

内訳

〈1〉 清恵会病院 二六四〇円

〈2〉 阪南中央病院 九六五〇円

〈3〉 大阪労災病院 一万八五八四円

〈4〉 〃 一万五九四二円

〈5〉 阪和病院 四万一八五〇円

(二) 入院雑費 二万四〇〇〇円

一日あたり一〇〇〇円で二四日分

(三) 通院交通費 九万五八六〇円

内訳

〈1〉 タクシー(一一日分) 一万三〇六〇円

〈2〉 バス 八万二八〇〇円

(堺市北花田町三丁~あびこ~大阪市住吉区南住吉町間で一日往復あたり三六〇円、実治療日数二四一日からタクシー一一日分を差引いた二三〇日分)

(四) 休業損害 四六〇万三三二四円

原告は、本件事故当時、電気配線工事を請負つて高所作業に従事し、月額四一万八四八四円の収入を得ていた。

が、本件事故により一一か月間休業を余儀なくされ、右金額の収入を失つた。

(五) 後遺障害による逸失利益 一二九五万〇九四二円

原告は、前記障害のため、症状固定時(三六歳)から六七歳までの三一年間、その労働能力を一四パーセント喪失したので、その逸失利益を年別のホフマン式により年五分の割合による中間利息を控除して算定すると、右金額となる。

(六) 慰藉料 二四〇万円

入通院の状況、後遺症の内容、程度に鑑みれば、右金額が相当である。

(七) 弁護士費用 一四〇万円

5  損害の填補

原告は、次のとおり、自賠責保険から合計五八七万〇〇三〇円の支払を受けた。

(一) 被告会社加入の自賠責保険から二九二万五二三五円。

(二) 被告久保加入の自賠責保険から二九四万四七九五円。

これらを控除すると、差引損害残額は一五六九万二七六二円となる。

6  結論

よつて、原告は、被告ら各自に対し、一五六九万二七六二円及びこれから弁護士費用を除いた一四二九万二七六二円に対する本件事故発生の日である昭和五四年七月二一日から右支払ずみまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払を求める。

二  被告会社の請求原因に対する答弁

1  請求原因1記載の事実は認める。

2  同2の(一)記載の点(なお書きを除く)は認める。

3  同3記載の事実は知らない。

4  同4記載の事実はいずれも知らない。

5  同5の(一)記載の事実は認める。

三  被告久保の請求原因に対する答弁

1  請求原因1記載の事実は認める。

2  同2の(二)記載の点(なお書きを除く)は認める。

3  同3記載の事実は知らない。

4  同4記載の事実のうち(一)ないし(三)は知らないし、また(四)ないし(七)は否認する。

5  同5の(二)記載の事実は認める。

第三証拠関係〔略〕

理由

第一  事故の発生

請求原因1記載の事実は、当事者間に争いがない。

第二  責任原因

請求原因2の(一)、(二)記載の点(なお書きを除く)は、当事者間に争いがない。したがつて、被告らは、各自、自賠法三条により、本件事故による原告の損害を賠償する責任がある。

第三  原告が受けた傷害、治療経過、後遺症

一  (清恵会病院関係)

原告本人尋問の結果(第一回)により真正に成立したものと認められる甲第二号証、同第七号証、証人朴東沢の証言、原告本人尋問の結果(第一回)に弁論の全趣旨を併せると、原告は本件事故後、いつたん自宅にもどつて自ら電話で救急車を呼び出し、堺市向陵中町四丁二番一〇号所在医療法人清恵会病院に向かい、診察を受けたところ、同病院では、「右大腿・腰部・頭部打撲」との診断を受けたが、入院するまでもないとされ、その後は、後記二のとおり転医したこともあつて、昭和五四年八月四日に一度通院したのみであつたこと、なお、同病院において、右膝・腰部のレントゲン検査が実施されているが、格別の異常所見は見当らなかつたことが認められ、右認定を左右するに足りる証拠はない。

二  (阪南中央病院関係)

成立に争いのない乙第一〇号証、原告本人尋問の結果(第一回)により真正に成立したものと認められる甲第三号証、同第八号証、原告本人尋問の結果(第一回)並びに弁論の全趣旨によると、昭和五四年七月二三日、原告は、大阪府松原市南新町三丁目三―二八所在阪南中央病院外科で診察を受けたが、同科の井上繁治医師は、「頸部・腰部捻挫」と診断したものの、その程度は、「約一週間の通院加療を必要とする見込み」といつたものであつたこと、もつとも、原告は、その後、同年八月一四日までの間に九日間通院していること、なお、同病院でも、脳波、精密眼底、レントゲン(胸部・助骨・頭部・腰椎・頸椎)検査等を受けているが、異常を示す所見はなかつたことが認められ、これを左右するに足りる証拠はない。

三  (大阪労災病院関係)

成立に争いのない乙第一五号証の一ないし一二、原告本人尋問の結果(第一回)により真正に成立したものと認められる甲第四号証、同第九、第一〇号証、証人永田清員の証言により真正に成立したものと認められる同第五号証、証人永田清員の証言、原告本人尋問の結果(第二回、但し後記採用しない部分を除く。)並びに弁論の全趣旨によると、次の事実が認められる。

1  原告は、昭和五四年八月一七日、堺市長曽根町一一七九の三所在大阪労災病院脳神経外科に頸部痛、胸部痛、両上肢、下肢しびれ感を訴えて診察を求め、同年一〇月二三日までの間、六日間通院したこと、この間、同科では、頭部コンピユーター断層撮影の結果によつても異常所見が認められなかつたため、脳神経外科的所見はないとしつつも、原告において、背部挫傷を訴えていたこともあつて、同病院整形外科の診察を勧め、同科に院内紹介したこと。

2  そのため、原告は、昭和五四年八月二三日同病院整形外科を訪れ、背部痛、胸部痛のほか、痛みだすと全身のけいれんと呼吸困難に陥る症状を訴えたこと、そこで、診察に当つた同科の平田医師は、背屈時の運動制限、頸の運動制限がみられたものの、レントゲン検査では、第六、第七頸椎間に経年性の骨棘が認められるのみで、外傷に起因する所見は何らみられず、ホフマン反射等の病的反射、知覚異常は認められなかつたので、上肢反射の亢進(永田清員医師は、必ずしも病的な反射とは限らず、しかも、外傷性とすると発症までに数か月を要するところから、本件事故と関連性はないとしている。)、胸部呼吸左右非称の所見も加味し、「頸部捻挫・胸部挫傷」との病名を付したこと。

3  その後右整形外科に通院(同月三〇日、同年九月三日)中、原告は主に胸部痛を訴え、同年九月六日には、永田清員医師に同月三日から血便がでていたと訴えるとともに、頭が重い、吐気、嘔吐、胸の痛み、呼吸困難などの症状を訴え、いわゆる「むち打ち症」として同整形外科に入院させてほしい旨懇請したが、同医師としても、原告がとりわけ強く訴える胸痛、呼吸困難も、助骨の骨折等によるものではなく、呼吸の左右非対称も、胸の痛み、発汗の著しいこと等と併せ考えて、消化器系の疾患をうかがわせる徴候にすぎないと判断し、しかも、外傷性の疼痛に効果のある星状神経節遮断術によつても改善がみられなかつたことから、内科医師による診察の必要を認めたので、同病院内科に院内紹介したこと。

4  かくして、原告は、同年九月一三日、同病院内科で胃潰瘍の診断を受け、爾来同年一〇月六日まで二四日間入院治療を受ける一方、両胸から肩部にかけての鈍痛を訴え続けたため、内科側の希望もあつて、整形外科側も、診察に当つたこと、前記永田医師は、この間の原告の病状につき、整形外科の立場からは、全般的に他覚的所見に乏しく、主訴には、右所見に対応せず、あるいは、医学上考えられない不合理な訴えが含まれ、しかも、それを誇張する傾向にあつたうえ、入院中も喫煙量が多かつた点は、内科入院患者として療養態度に問題があるのみならず、通常の「むち打ち」症患者ではみられない事態であるとするとともに、退院後の最終診断時(同月二〇日)の原告の症状についても、主訴はあつたものの、他覚的所見としてみるべきものはなく、治療を要する状態とはいい難いことなどを明らかにしていること(なお、退院後の同科通院は同月一三日、同月二〇日の二日間のみであつたこと。)。

5  以上1ないし4の事実が認められ、原告本人尋問の結果(第二回)のうち、右認定に反する部分は前掲各証拠に照らし措信し難く、他に右認定を左右するに足りる証拠はない。

四  (阪和病院関係)

成立に争いのない乙第一四号証の一ないし九、原告本人尋問の結果(第一回)により真正に成立したものと認められる甲第六号証、同第一一号証、同第一三号証、原告本人尋問の結果(第一回)に弁論の全趣旨を併せ考えると、原告は、昭和五四年一〇月二三日、大阪市住吉区南住吉町三の九五所在医療法人阪和病院に赴き、頸部痛、背部痛、腰痛、両下肢しびれ感、両上肢知覚異常を訴えたけれども、同病院森泰壽医師は、他覚的には、レントゲン、腱反射、ラゼクー検査、知覚検査等に異常は認められなかつたが、主訴から「頸部・腰部捻挫」の病名を付し、その改善に向け、理学療法を主体とした治療を行うことにしたこと、こうして、原告は、昭和五五年七月一日までの間に一八四日間通院してリハビリを受けたが、この間主に胸部、背部の痛みを訴えることも多かつたこと、なお、同医師作成の同年七月二日付後遺症診断書には、主訴又は自覚症状の欄に、胸の痛みは記載されず、初診時と同じ主訴が挙げられており、また、他覚症状及び検査結果の欄には「脳波、CTには異常は認められない。腱反射も正常。両下肢、C5。6。7。8領域に知覚鈍麻を認める。握力右二八kg左三〇kg」との記載があるほか、頸椎の運動障害(前後、左右屈、左右回旋がいずれも二〇度)がある旨記されていること、右運動障害について、同医師は、後頭部筋等の軟部組織の器質的病変も運動制限の原因として考えられるとの所見を述べていることが認められ、これを左右するに足りる証拠はない。

五  右一ないし四で認定した事実に、証人永田清員の証言を併せると、原告の症状と本件事故との関連性については、次のとおり考えるのが相当である。

1  原告は、本件事故により、右大腿部・腰部・頭部・頸部に打撲ないし捻挫の傷害を受けたが、いずれも入院治療を要するまでもないものであり、そのうち、右大腿部打撲については、早期に完治し、また、腰部捻挫については、外傷に起因するとみられる他覚的所見は皆無で、主訴も、阪南中央病院中にあつたものの、大阪労災病院では、治療の対象とさえなつていなかつたうえ、阪和病院に通院中、時に痛みを訴えたといつた程度にすぎず、このような症状が果してこのまま長く後遺症として残存するか否か、多いに疑問があるうえ、頭部打撲についても、コンピユーター断層撮影、脳波、レントゲン検査に異常はなく、脳神経科的所見は存しないとされているので、後遺症として何らの症状も残さなかつたものといわざるを得ない。しかし、頸部捻挫については、頸椎に器質的変化を伴う障害はなかつたものの(森医師の前記四における所見は、永田証言に照らすと、他覚的所見として述べられたものではなく、単に一般的な可能性を述べたにすぎないと理解される。)、他覚的所見に乏しい頸部痛、両肢のしびれ等の愁訴となつて長期間持続し、これらが、後遺症状として残存したものと考えられる。もつとも、原告が、医師に対し、症状を必要以上に強く訴えたことや、後記2で述べる内科的疾患が併発したことのほか、その心因的要素が多分に影響を及ぼしたことによつて、症状が増幅され、治療期間が著しく遷延したということができる。

2  また、原告は、大阪労災病院通院し始めて以後、主に胸部・背部痛、呼吸困難等を訴えるようになつたが、これらの症状は、本件事故による外傷によるものとはいえず、むしろ事故とは無縁の内科的疾患に起因するものと考えられる。

第四  損害

一  治療費 八万八六六六円

1  清恵会病院

前記甲第七号証によると、原告は同病院に治療費として、二六四〇円を支払つたことが認められる。

2  阪南中央病院

原告は、同病院に対し、九六五〇円支払つた旨主張しているところ、前記甲第八号証によると、少なくとも、治療費として右金額を支払つたことが認められる。

3  大阪労災病院

前記甲第四、第五号証並びに弁論の全趣旨によると、原告は、同病院に治療費として、三万四五二六円を支払つたことが認められる。

4  阪和病院

前記甲第一一号証によると、原告は、同病院に治療費として、四万一八五〇円を支払つたことが認められる。

二  入院雑費

原告は、入院雑費を本件事故による損害として、その賠償を請求しているけれども、前記のとおり、右入院は本件事故による傷害治療のためには必要がなかつたものであるから、右請求は失当といわざるを得ない。

三  通院交通費 七万九三〇〇円

1  タクシー代

原告本人尋問の結果(第一回)とこれにより真正に成立したものと認められる甲第一二号証の一ないし二一によると、昭和五四年八月四日から同年九月六日までの間、原告は通院のためタクシーを利用し、その代金として計一万三〇六〇円支払つたことが認められる。

2  バス代

原告本人尋問の結果(第一回)に弁論の全趣旨を併せ考えると、原告はバスで阪和病院に通院し、その代金として自宅附近の堺市北花田三丁から阪和病院所在の大阪市住吉区南住吉町まで往復三六〇円を要したことが認められるところ、前記のとおり合計一八四日通院しているから、その合計額は六万六二四〇円となる。

四  逸失利益

1  前記乙第一四号証の一ないし九、原告本人尋問の結果(第一回)並びに弁論の全趣旨によると、原告は本件事故当時三五歳で、四名の従業員を雇い、ビル関係の電気の配線と設備の高所作業に従事していたこと、そして、原告は、本件事故日から昭和五五年三月末頃まで休業したのち、同年四月から徐々に作業に復帰し、同年七月からは、毎日仕事に出るようになつたこと、また、現在でも、胃潰瘍の薬を服用していることが認められ、右認定を左右するに足りる証拠はない。

また、その方式及び趣旨により公務員が職務上作成したものと認められるから真正な公文書と推定すべき甲第一四号証、同第一五号証、同第一六号証の一、弁論の全趣旨により成立の認められる同第一六号証の二によると、原告は、昭和五二年度は四五二万円、同五三年度は二三〇万六九八〇円、同五四年度は二九二万九三九〇円、それぞれ収入を得たとの納税申告をなしていることが認められる。

ところで、原告は、右五四年度の納税申告額を基準とし、それは昭和五四年七月までの収入額であるから一か月あたり四一万八四八四円の収入を得ていた旨主張しているが、右申告は本件事故後になされたものであるうえ、昭和五三年度の申告額を優に上回るものであることを考えると、原告の主張額をそのまま肯認することはできない。

しかし、昭和五三年度の申告額を基準とすることも、昭和五二年度の申告額を考えると妥当性を欠くものと考えられるので、これら諸事情に徴し、原告個人の収入額は、賃金センサスによるのが相当と考えられる。

そうすると、昭和五四年度の賃金センサス産業計・企業規模計・学歴計によると、同年度の三五歳ないし三九歳の男子労働者の平均給与額は一か年三六四万六八〇〇円である。

2  休業損害 二五八万一七三三円

原告の受傷に伴う症状は、前記第三で認定、説示のとおり、併発した内科的疾患と心因的要素とがからみ合つて増幅され、当初の傷害の部位、内容、程度に比してかなり長期間に及んだと考えられるから、損害賠償法の基本理念である公平の原則に照らし、被告らに対し賠償を求め得る休業損害は、事故日から大阪労災病院内科入院の前日である昭和五四年九月一二日までの五四日間について、その全額を、その後、症状固定日である昭和五五年七月一日までの二九二日間について、その七〇パーセントに相当する額をもつて限度とすべきであると考えられるから、次の算式のとおり、二五八万一七三三円となる。

(算式)

三六四万六八〇〇÷三六五×五四=五三万九五二六

三六四万六八〇〇÷三六五×二九二×〇・七=二〇四万二二〇七

五三万九五二六+二〇四万二二〇七=二五八万一七三三円

(円未満切捨て。以下同じ。)

3  後遺障害による逸失利益 九九万五九四一円

原告には、前記第三で認定した後遺障害が残存しているところ、右認定の障害の内容、程度のほか、原告自身の精神状態による心因的要素が多分に影響していると考えられることなどをも勘案すると、被告らに賠償を求め得る逸失利益は、症状固定日から三年間の得べかりし収入の一〇パーセントに相当する額をもつて限度とするのが相当であるから、原告の後遺障害による逸失利益を年別のホフマン式により年五分の中間利息を控除して算定すると、次の算式のとおり、九九万五九四一円となる。

(算式)

三六四万六八〇〇×〇・一×二・七三一=九九万五九四一

六  慰藉料 一二〇万円

本件事故の態様、原告の傷害の部位、程度、治療の経過、後遺障害の内容程度、その他諸般の事情を考えあわせると、原告の精神的苦痛を慰籍する金額は一二〇万円とするのが相当である。

第五  損害の填補

請求原因5の記載の事実は、原告の自認するところである。

そして、前記第四認定の損害額から、右填補額を差し引くと、右損害額は、すべて填補されて余りあることは計数上明らかである。

第四  以上のとおりであるから、その余の判断をするまでもなく、原告の本訴請求は理由がないので、いずれもこれを棄却することとし、訴訟費用の負担について民訴法八九条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判官 弓削孟 本田恭一 佐々木茂美)

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